~暮らしの中の自然モノサシ市民調査~小冊子

「冊子完成」

~暮らしの中の自然モノサシ市民調査~小冊子
暮らしの中のこうちモノサシノート①が届きました。
原稿・イラスト・画像・励まし等々の皆様ありがとうございました。
出来はシンプル且つ素朴です。文字や行間を大きめ広い目にしたので、おしゃれ感は減速していますけど。
でもイラストとフォント(火風水埜の尾崎さん)に助けられて、落ち着きつつやさしい目にできています。
3月と4月以降各所に配布します。お入用の方はお申し出ください。

自然モノサシ地域ワークショップを終えて

自然モノサシ地域ワークショップを終えてと題して、少し長い目のレポートを書いています。
暮らしの中の自然モノサシサイトにて掲載しますが、多分そこまでたどり着かない方が多いでしょうから、ここで無理やり掲載します!
3000文字ですので、多分ほとんどの人は読まんでしょうけど。

今年度は暮らしの中の自然モノサシ市民調査の手法開発のために、高知県内の数か所で各種イベントに参加し展示やアンケート、グループインタビュー、そして大小様々な「自然モノサシ地域ワークショップ」を開催しました。
今回は県北西部の山間部中津川地区(四万十川のやや上流域、一次支流梼原川の二次支流となる中津川流域)、県西部の海沿いの町大月町、県東部の奈半利町の山間部米ヶ岡の3か所で行った「自然モノサシ地域ワークショップ」についてレポートします。
私自身、高知県内各地を仕事柄よく訪れるので、ある程度予測していたことがあります。
きっと地域(場合によりかなり限定した集落)固有の「何か」があるだろうと。高知市などの都市近郊での聞き取りやイベントでのアンケートなどでは出てこない「豊かさの言葉」があるだろうと。
都市近郊部はいろんなところから人が集まるせいか、やや平均的な情報が集まる傾向にあると思われます。参加したイベントの性格が環境系や生物多様性に関連するものが多く、一定のバイアスがかかっている可能性があるので一概に断定はできませんが、集まったデーターを見た限りではやはり予測通りといえるでしょう。
例えば春なら桜、秋は紅葉などです。もちろん間違いではないですが、「おっ!」と思う言葉が少ないのも事実でした。

さて、今回の3か所での開催はいい意味で予想外の展開がありました。今はまだ「試運転」の段階なので、言い切ることは難しいのですが、3つの会場で共通したヒートポイントが「食べるに関連すること」だったのです。「暮らしの中の自然モノサシ」であり舞台が山川里海なのでまあ当たり前といえば当たり前なのですけど、それにしてもやはり「豊かさ」や「幸せは」食べることに直結なのですね。
人の歴史は飢えからの解放である事実を考えたらものすごく自然です。暮らしとは生きることであり、食べものは自然のめぐみですから。豊かさの原点は幸せであり、そして高知は食べものの豊かさと魅力で有名です。観光という視点から見ても食べものの豊かさが他県に比べて高得点であることも納得できます。
もちろん食べることには道具や作法・栽培採取、伝承や昔話、生態系や生活全般の知恵と連なりますから、食べることは暮らしの起点という言い方ができるかもしれません。高知の置かれた地理的要因から古い伝統が地域に色濃く残っていることが多いので、それが食の個性に影響を与えていることは十分にかんがえられます。

話が横へそれました。まず今回行った地域ワークショップ流れをごく簡単に紹介します。
地域についての話題提供などをいただいた後、四季別に季節を感じるキーワードを各自に書いてもらいます。が、経験上四季すべてを行うことは時間的に到底無理とわかっています。なのでどれか1つにするべくみんなで「相談」します。同じ地域で四季やテーマごとに分けてワークショップを開催するともっと深みが出るでしょうね。今後の課題です。
さて、相談の結果中津川では「春」大月では「冬」米ヶ岡は「春」でした。
次に模造紙の上に付箋紙に書いたキーワードを張り付けてもらいます。
なかなか書いていただけない地域もあれば、どんどん出てきて文字通り机の上から言葉があふれ出た地域もあります。
一通り出していただいたのちにみんなで見てみます。
見てゆく間にも参加者から次々と「言葉」が出てきます。これも丁寧に拾い付け足してゆきます。
おおよそ出尽くしところで今度はこの出てきた「言葉」をいくつか選んでゆきます。
ここが難しいところでもあり、まだまだ工夫が必要なのですけど、地域特性や豊かさあるいは危機的なこと、あるいは私が独断と偏見で「おもろい」と思ったことなどを選んでゆきます。あらかじめワークシートを用意して進めることも考えましたが、地域の皆さんのよさを引き出すためにも、あえてその場その場の流れに任せることにしました。
そしてその言葉からの連想ゲーム。
終着点を用意せず、予定調和も考えないというファシリテーター泣かせな手法ですが、これはいずれある程度整理しワークシート化してゆこうと考えています。
結果として、中津川はイタドリ、大月はヌタ注1、そして米ヶ岡はハミ注2に到着。
イタドリはどんな風に食べるか?どうやって食べるか?などを掘り下げました。なかなか面白かったのは「昔よく学校帰りに食べた」「そうそう。塩の小袋をもってね。」「いやワシは今でも食うで!」一同「えっ!!」これはなかなか面白いシーンでした。
大月ではヌタの多様性に驚きました。みなさんの頭に描いたヌタが実は全部少しづつ違うヌタだったという驚き。
時期が違い食材が違うとヌタのレシピも少しずつ違う。家庭でも違う。職業でも違うのですね。(冗談でヌタの多様性シンポジウムとか全国ヌタ大会となんて冗談も出ましたが、大月の皆さんの行動力ならあり得るかも)
米ヶ岡も特段誘導したわけでもないのですが、やはり食べ物にたどりつきました。
そうです。ハミをいかにしていただくか!捕まえて皮をはがして・・・オーブントースターで焼く。私自身もハミは何度かいただきましたが、家庭用のオーブントースターで調理とは!絶句でした。
もちろんいわゆる野草の山菜料理や栽培作物のお話もでました。が、このハミの話の盛り上がること。
地域性の強い「何か」が出ることにより、調査や聞き取りといういわば公的な何かから一気に地域の暮らし目線におりてきた気がします。

今年1年の経験から得たことは、「自然の豊かさ」を考える上で重要なことは、やみくもな懐古趣味やただひたすら保全するのではなく、理解しつつ活かす。あるいはどのように持続するかを住民自身や視点で考える。そのためにはどういうアプローチすればいいか?それを市民自身で考える。そういう時期に来ているのではないかと考えています。

では改めて豊かさとは何でしょうか。
今まで様々なアプローチが試されてきました。県内外や国外でも豊かさや幸福度についての議論がなされ、行政や各種団体でも数値化されたり政策にいかされていますし、手法も様々です。
でもまだまだ地域の豊かさやしあわせを「暮らしと自然の関係性で解き明かした手法」にはたどり着けていないと感じてます。
このプロジェクトは高知県内において、県民が暮らしの中で高知県の『自然の豊かさ』を実感して、いいところもたくさんあるけど、このままほっといたら高知の豊かさは失われる。では豊かさって何だろう?幸せとはいったい何なのだろうかを考えるためのモノサシとして『暮らしの中の自然モノサシ市民調査』手法を開発しようという試みです。数値化も難しいし、比較も簡単ではない豊かさやしあわせを地域の「モノサシ」、一人一人の「モノサシ」として表現しようと思います。
ゆくゆくは四国内や全国各地でも同時進行して、比べてみたり、違いを探したりできたらなかなか面白いと考えています。

注1 ヌタ(饅)高知県特有のタレの一種。葉にんにく、各種の味噌、ゆずなどの酢ミカンの酢(いわゆる米酢を使う地域もある)、砂糖などの各種様々な調味料を独自ブレンドしたもの。魚の刺身など冬に食べるときによく使われる。私の感覚では「ディップ」ですね。
注2 いわゆるマムシの高知県の地方名。ハメともいう。